高木てつ子さん(仮名)のお話し
 
あたしね、膝が悪いでしょ。だから娘や嫁と出かけると、どこへ行ってもどこからか車いすを持ってきてくれて、行った先では車いすで移動するの。
いろんなところへ誘ってくれるけど申し訳なくてね、でも、迷惑かけるからっていうと、「わかってて誘うんだから」って言ってくれるから、つい甘えて連れてってもらうの。
 
でね、車いすに乗るでしょ。乗ったら「自分でこぐわ」っていうの。
そうするとね、娘は「何言ってるの。押してあげるわ。お母さんが車いすこぐと遅いから、押すんだから、気を使わなくていいのよ」って言って押してくれるの。
嫁はね、こぐわ、っていうと「うん」っていって、後をついてくるの。で、少しすると「疲れたら言ってよ。押すからね」って言ってくれるの。
 
どっちも優しいでしょ。でもね、あたしは嫁に連れてってもらった時のほうが、自由にいろいろ見れて楽しいの。
押してもらうと楽だけどね。見たいものがあっても、言いづらいでしょ。
 
 
 
てつ子さんは、いつも明るく朗らかで、家族からもとても愛されている。
 
介護って、押してあげるほうが介護っぽいけど、本人はちょっとぐらい自分も大変なほうが気が楽なもんなのかもしれません。